非居住者の日本のFX業者を通じて得た利益に対して、私は総合課税の雑所得等として日本でも申告納付しなければならないことになると思います。
非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た利益の確定申告の要否ですが、インターネット上でも専門家の間で様々な解釈があります。ネットで情報を収集される際には2019年3月25日以降の記事を参考にされることをおすすめします。
この記事では、なぜ私は総合課税の雑所得等として日本でも申告納付しなければならないことになると考えるのかについて記載しています。
なぜ専門家の間でも解釈がわかれるのか
非居住者が日本で納税が必要な所得は日本の国内源泉所得に限られます。
我が国の所得税法では、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に、法人を「内国法人」と「外国法人」とに分けた上で、「非居住者又は外国法人(以下「非居住者等」といいます。)」に対する課税の範囲を「国内源泉所得に限る」こととされています。
つまり、非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た利益が日本の国内源泉所得にあたるか否かがポイントになります。
国内源泉所得は所得税法等に記載されています。非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た利益に関しては、
(1) 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得
上記に該当するか否かが専門家の間でも見解がわかれていました。
抽象的な記述で、非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た利益に関して、政令及び通達等にFX取引に対して直接的に言及した記述がなかったためです。
この点、2019年3月25日国税不服審判所裁決により
本件FX取引における契約上の地位は、本件FX取引の対象とされる通貨間の為替の変動に応じて利益又は損失を生じさせ得る契約上の地位であり、本件規定にいう「資産」に該当し、本件FX取引における差金決済に係る所得は、請求人がこのような契約上の地位に係る権利を行使することにより生じたものであって、当該契約上の地位又は権利を他に移転したことにより生じたものではない。
したがって、差金決済に係る所得は、本件規定にいう「資産の譲渡により生ずる所得」には該当せず、「資産の運用、保有により生ずる所得」に該当する。
また、本件FX取引においては、スワップポイントの受払い、すなわち、ロールオーバーにより決済日が繰り越されたことによる組合せ通貨間の金利差を調整するため、その差に基づいて算出される額の受払いが行われていたところ、当該スワップポイントは、資産たる未決済取引に係る契約上の地位を他に移転することなく保有することにより授受されるものであるから、スワップポイントに係る所得は、本件規定にいう「資産の運用、保有により生ずる所得」に該当する。
なお、本件FX取引における未決済取引に係る契約上の地位が、本件規定にいう「国内にある資産」に該当するかについては、所得税法施行令第280条第1項第3号が、本件規定にいう「国内にある資産の運用、保有により生ずる所得」として、国内にある営業所、事務所その他これらに準ずるもの又は国内において契約の締結の代理をする者を通じて締結した生命保険契約等に基づく保険金の支払等を受ける権利の運用、保有により生ずる所得を例示していることを踏まえると、本件所得が、上記1の(3)のイの(イ)及び同ハのとおり、国内の本件金融商品取引業者を通じて得られていることから、上記の地位は、「国内にある資産」と認められる。
非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た所得は「資産の運用、保有により生ずる所得」として国内源泉所得として認定されたと言えます。
どのように課税されるのか
日本国内で日本のFX業者を通じて利益を得た場合には、先物取引に係る雑所得等の課税の特例により税率は20%とされています。(※実際の納税額は復興特別所得税含み20.315%)
居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、一定の先物取引の差金等決済をした場合には、その先物取引に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下、この合計額を「先物取引に係る雑所得等の金額」といいます。)については、他の所得と区分して、所得税15%(他に地方税5%)の税率による申告分
この点については、「居住者」「国内に恒久的施設を有する非居住者」に該当しないため、総合課税の雑所得等として申告納付しなければならないことになると考えます。
したがって、その他日本国内源泉所得がないのであれば、FX所得を総合課税の雑所得等として、所得控除を控除し計算された個人所得税額を納税することになると思います。
所得控除
非居住者が使用できる所得控除は下記の通りです。
日本国内に住所などがない、いわゆる非居住者の場合の所得控除は、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の三つです。
雑損控除は災害又は盗難若しくは横領によって損害を受けた場合、寄附金控除は、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合により使用できる所得控除ですので、非居住者の方はあまり関係がないと思います。参考までに国税庁のリンクを貼っておきます。
⇒ 雑損控除
⇒ 寄付金控除
令和2年分以降の基礎控除については下記の通りです。
個人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
⇒ 基礎控除
税率
所得税の税率は、5%から45%の7段階に区分されています。
この記事には所得税の計算に便利な速算表を下記に記載します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
⇒ 所得税の税率
個人所得税の計算方法
仮に1,000万円の非居住者が日本のFX業者を通じた取引で得た所得を総合課税の雑所得等として申告納付する場合の個人所得税を計算してみます。
この場合、個人所得税下記の手順で計算します。
① 1,000万円の所得から48万円の所得控除を控除。
所得が2,400万円以下のため控除額48万円を使用します。
1,000万円-48万円=952万円となります。
② 952万円を速算表にあてはめ
900万円を超え1,800万円以下のため、税率33%、控除額1,536,000円を使用します。
9,520,000円×税率33%-控除額1,536,000円=1,605,600円
と計算されます。
ポイント
所得控除は速算表にあてはめる前に控除しましょう。
非居住者は日本のFX業者で取引しない方が良いのか。
非居住者の日本のFX業者を通じて得た所得には、居住者が日本でFX取引をした時と異なり、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」を使用できないと考えます。
では、非居住者は日本のFX業者で取引しない方が良いのかというと、あくまで私見ですが私は一概に取引しない方が良いとは言い切れないと思います。
計算してみたところ、他に日本国内源泉所得のない非居住者であれば、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」を使用できないことによる不利益は、FX所得が約1,300万円ほどないと生じないと思うためです。非居住者には住民税分の負担がないためです。
「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」による計算
13,000,000×20%=2,600,000円
総合課税の雑所得等による計算
13,000,000-所得控除480,000=12,520,000
12,520,000×税率33%-控除額1,536,000円=2,595,600円
となるためです。
まとめ
私個人の話しですが、現在タイに居住しており、日本のFX業者(ヒロセ通商 )で取引しています。FX業者によっては非居住者の口座開設を認めていない業者も多く注意が必要です。
ヒロセ通商の公式ホームページ⇒ ヒロセ通商株式会社
参考記事⇒ 「海外居住」日本非居住者でも口座開設できるFX業者
個人的には慣れるまでは日本のFX業者で取引をして、数千万円稼ぐようになったら信用できる海外のFX業者を探してみようと思っています。今のところは、日本のFX業者ならでは、日本語でのサービスや日本語取引画面に非常に助かっています。
この記事はあくまで個人の見解によるものです。内容の正確性、信頼性等は保証されるものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。実際に納税される際には、日本ならびに居住地の税務署または税理士にご相談ください。